「暴走族、絵本作家になる」 のぶみ
p126
僕は、さくらももこさんが自然に生きていて、
自然になにかを描くということが、日本中を喜ばせているんだなと思った。
「天才とは、自分自身であった人のことだ」 中原中也
ホント、それだけでいいのだ。
自分になるだけでいい。
余計なことは、しなくていい。
それだけで人は、すごく個性的で、ものすごく魅力的になれるのだ。
p128
この頃の僕は、
「もう一度、売れたい!」とばかり思っていた。
でも作る人が考えないといけないのは、
売れることじゃない。
読んで頂いた人に、喜ばれることだ。
p129
(「絵本の神様」と呼ばれる長新太さんのことば。)
「あなたの作品にはね、わたしの作品にはない、
色んな物が内包しているように思います。
わたしは、不勉強ですから、まだまだ勉強しなければなりませんね。」
僕は感動してしまった。
なんで、こんなに謙虚でいられるんだろう。
自分が、自分が、と考えていた自分のことが、恥ずかしくなった。
どうやら僕は、自分が、自分が、という気持ちのせいで、
大切な物が見えてなかったようだ。
p144
アンパンマンの作者、やなせたかしさんの家に行った時、
やなせさんが、広告代理店の人と話しているのを見たことがある。
広告代理店の人が、
「すいません、今回は、少ないんですが、
これくらいの価格でご相談できないでしょうか・・・・」と
申し訳そうに言うと、
やなせさんは、その値段も見もしないで、
「いいよ、いいよ~、もっとそっちで取りなさい、大丈夫だから」
と笑って言っていた。
広告代理店の人は、ホントにビックリしていた。
やなせさんは、周りのみんなを喜ばそうと、
パーティーを毎年開催したり(1000人分、すべてやなせさんが払う)、
アンパンマンミュージアムを建てて、
自分の生まれた高知県に恩返しをしたりしている。
アンパンマンみたいに自分の物をどんどん人にあげてしまうのだ。
やなせさんは、僕に、
「世界中の人を救うのは、ムリだけど、
周りの人くらいなら喜ばせられるだろう?
お金が入ってきたら、人のために使いなさい。
お金は、自分のために使うものじゃないよ、
みんなを喜ばせるために使うものだよ」と言ってくれた。
p146
ミッフィーの作者、ディック・ブルーナさんに会った時、
僕が「ブルーナさんさんを世界一の絵本作家だと思っています」というと、
「あなたも世界一ですよ、わたしも世界一、
わたしなりの、あなたなりの世界一があるはずですよ」と言ってくれた。
僕は、感動して涙がたくさんでた。
僕なりの世界一は、きっと、僕の中にあるんだ。
色紙をお願いすると、ブルーナさんは、
「わたしと同業者の、のぶみが、
たくさん成功することを、心から願っています」と書いてくれた。
超一流の人たちは、ホントに心も素晴らしかった。
だから、こんなに作品が愛されてるんだよなと思った。
p188
絵本作家の、きむらゆういちさんが、言ってくれたこと。
「のぶみの話を聞いてるとさ、
外ばっかり見てるよな。
もっと、中を見ないといけないよ。
自分の中を掘り下げていかないとダメってことだよ。」
絵本作家の田畑精一さんが言ってくれたこと。
「子供のために絵本を描いてるなんて言っちゃいけないよ、
そんなの、ちょっと上目線だろう?」
「え!じゃあ、どんな風に絵本を描けばいいですか?」
「う~ん、そうだねぇ、子供とさ、手をつなぐように描けばいい」
絵本作家の五味太郎さんが、言ってくれたこと。
「すきまっていうのがあるよね、
これは、ないんだけどあるんだよ。
コップとコップを置くと、すきまができるだろ、
でも、片方とるとないんだよね。
こういうことを不思議だなって思うことが大切なんだよ。」
高橋歩さんが、言ってくれたこと。
「ウソを書かないことだよ。
自分がホントにグッときたことを書くんだ。
グッとくることは、ウソじゃねぇからさ、
それが読者に伝わるんじゃないのかな」
奥さんの言葉、
「まず、こうすれば売れるとか思ってることが、
小手先の技術って感じがするよね。
パパはさ、
素直になればきっと、いいものが出来ると思うよ。
わたしは、ず~~~~っとそう思ってたよ。
結局、素直が一番光るのよ、ってね」